お盆休みは、いつもより少しだけ自分の時間を持てる時期。
そこでEmpath Coreから、期間限定の特別企画をご用意しました。
「自分の思考を整理する10の質問」
AIや経済状況、社会の変化によって、働く人が「自分の仕事はなくなるのではないか」「自分は必要とされているのか」と感じる場面が増えています。
この記事では、こうした不確実性が仕事への満足度や心理的な状態にどのように関係するのかを、心理学の視点から取り上げています。
「働き方」を単なるキャリア論ではなく、心理的な不確実性と人の認知・行動の問題として考えるきっかけになると思います。
理想と現実の差が大きくなったとき、人はその差を埋めるために行動を変えるとは限らない。
APAでも、認知的不協和を避けたり軽減したりするために、自分と一致する情報を選択することが研究されており、単純に「矛盾があれば必ず行動を変える」という話ではありません。だからこそ、「理想を持つこと」より先に、「理想と現実の間で自分の中に何が起きているのか」を見ることが重要なのではないか。
AIが仕事に入り込む速度が、これまでとは明らかに変わってきました。
文章を書く。資料をまとめる。情報を整理する。アイデアを出す。これまで人が時間をかけて行ってきた仕事の一部を、生成AIが短時間で支援できるようになっています。
では、これから仕事はAIに奪われていくのでしょうか。
現在の研究を見る限り、答えはそれほど単純ではありません。
国際労働機関(ILO)は2025年、世界の労働者のおよそ4人に1人が、生成AIの影響を受け得る職業に就いていると推計しています。ただし、生成AIによって多くの職業そのものが消滅するというより、仕事の一部がAIによって補助され、仕事の内容そのものが変わっていく可能性の方が高いとしています。
つまり、問われているのは「AIに仕事を奪われるか」だけではありません。
AIが仕事を変えたとき、自分はその変化に対応できるのか。
ここが、これからの働き方を考える上で重要な問題ではないでしょうか。
中高年にとっては、別の難しさがあるAIの話になると、若い世代はデジタルネイティブだから有利だ、と考えられがちです。
しかし、世代だけで単純に判断することはできません。
一方で、OECDの2025年の報告では、年齢が高い労働者ほど、同じ職業の中でも高度なICTスキルを使う割合が若い労働者より低い傾向が確認されています。基本的なパソコンやインターネットの利用では大きな差がない一方、専門的なソフトウェアなど、より高度なICTスキルの利用には年齢差が見られます。
日本でも、厚生労働省は2026年の職業能力開発基本計画の中で、中高年労働者の課題として、役割の変化への対応、若年層と比べたOJT・OFF-JTの機会の少なさ、そしてデジタル化など時代の変化への対応を挙げています。
ここには、単純な「能力の差」ではない問題があります。
長く働いてきた人ほど、これまでの仕事のやり方があります。
その方法で成果を出し、経験を積み、評価されてきた人にとって、突然「これからはAIを使ってください」と言われても、すぐに切り替えられるとは限りません。
しかも中高年の場合、若い頃のように「これから何十年もかけて新しい仕事を覚えればいい」と考えることが難しい場合もあります。
だからこそ、AI時代の働き方を考えるときには、「新しいスキルを身につけましょう」だけでは不十分なのだと思います。
AIを使える人だけが残る、という話でもないでは、AIを使えるようになれば問題は解決するのでしょうか。
これも違います。
世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」では、2030年までに労働者が必要とする主要なスキルの約39%が変化すると企業が予測しています。一方で、AIやビッグデータなどの技術的スキルだけでなく、分析的思考、創造的思考、柔軟性、レジリエンス、リーダーシップなどの人間的な能力も重要性が高まるとされています。
つまり、
AIを使えることと、AI時代に価値を持つことは同じではありません。
AIに指示を出すことができても、その答えが適切なのか判断できなければ仕事には使えません。
何をAIに任せ、何を自分で考えるのか。
AIが出した情報をどう確認するのか。
その結果を、自分の経験や現場の状況とどう結びつけるのか。
これらは、AIそのものの操作とは別の能力です。
これから必要なのは「経験を捨てること」ではない中高年がAI時代に対応するというと、これまでの経験を捨てて、新しいスキルを一から身につけるようなイメージを持つかもしれません。
しかし、本当に必要なのはそこではないのではないでしょうか。
これまで培ってきた経験に、AIという新しい道具を加える。
例えば、長年の仕事で身につけた判断力をAIによる情報整理に組み合わせる。
顧客対応の経験を、AIを使った事前準備に活用する。
文章を書く経験を、AIを使った下書きや整理に生かす。
そう考えると、AIは「これまでの経験を無価値にするもの」ではなく、経験の使い方を変える道具にもなります。
日本の経済産業省も、2040年に向けた就業構造について、AI・ロボットの利活用やリスキリングによって労働需要が効率化される一方、職種や学歴、地域などによって人材需給のミスマッチが生じる可能性を示しています。
重要なのは、「AIを使えるか、使えないか」という二択ではありません。
自分の仕事のどこをAIに任せ、どこに人間の判断や経験を残すのか。
これを考えることではないでしょうか。
AI時代だからこそ、自分の仕事を考えるAIの登場によって、仕事の一部が変わることは避けられません。
しかし、未来の仕事について「なくなる」「なくならない」と断定することもできません。
ILOも、AIによる仕事への影響を予測することには限界があり、技術の進化や実際の導入方法によって結果は変わるとしています。
だからこそ、必要以上に不安になることも、逆に「自分には関係ない」と考えることも、どちらも得策ではないと思います。
まずは、自分の仕事を細かく分けてみる。
何に時間がかかっているのか。
どこならAIに任せられるのか。
逆に、AIには任せたくない仕事は何なのか。
そして、自分にしかできない判断や経験は何なのか。
AI時代の働き方を考えることは、AIの勉強だけをすることではありません。
自分がこれまで積み上げてきたものを、これからどう使っていくのかを考えること。
その問いもまた、これからの働き方を考える上で重要になっていくのではないでしょうか。
筆者:早乙女【Empath Core代表】
掲載日:2026年8月17日